研究課題
基盤研究(B)
これまでに我々は、大脳皮質視覚野2/3層錐体細胞間の神経結合を解析し、錐体細胞の軸索が抑制性細胞の細胞体を介さずに、抑制性細胞の軸索終末を直接活性化し、伝達物質を放出させるという全く新しいタイプの抑制性神経回路を見出した。本年度は、錐体細胞間抑制性伝達を仲介する抑制性終末の起始ニューロンのサブタイプの同定を行った。ラットの大脳皮質視覚野から切片標本を作製し、2/3層錐体細胞からホールセル記録法を用いて錐体細胞間抑制性反応を記録した。錐体細胞間抑制が錐体細胞の細胞体に入力しているかを調べるために、カイニン酸受容体遮断薬を封入したピペットを用いて、局所的な遮断薬投与を行った。細胞体近傍にカイニン酸受容体を投与すると、錐体細胞間抑制は著しく減弱した。従って、この抑制性反応には錐体細胞の細胞体周辺にある抑制性シナプスが関与していると考えられる。細胞体に抑制性入力するのは、パルブアルブミンまたはCCKを発現している2種類の抑制性ニューロンサブタイプが報告されている。抗パルブアルブミン抗体または抗CCK抗体を用いて抑制性神経終末を、抗VgluT1抗体を用いて興奮性神経終末を染色し、抑制性反応を担うシナプスを可視化したところ、どちらの抑制性ニューロンタイプの終末にも興奮性シナプス終末が隣接している染色像が多く観察された。以上の結果は両方の抑制性ニューロンサブタイプが錐体細胞間抑制性反応を担うことを示唆する。
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Neuroscience Research 64
ページ: 191-198