研究課題
基盤研究(B)
本格的な生産体制となったサハリンの原油ガス生産活動に関連し、北海道近海において危惧される油流出事故を具体的に想定するため、宗谷海峡周辺の船舶航行危険度を評価する手法の確立と、想定される危険域からの油流出にともなう沿岸への環境影響について実証試験を含めて明らかにすることを目指した研究を行った。研究2年目の平成22年度は、研究初年度に北欧諸国等から招聘した研究者からの助言をもとに、AISデータを用いた船舶航行状況の新たな評価手法を検討し、宗谷海峡において収集した船舶のAISデータを用いた宗谷海峡の船舶航行危険域の把握を行った。また初年度に実施した油濁海水のホタテガイへの影響について、手法を改良し引き続き油濁水によるホタテガイへの影響を調査した。さらに漂流シミュレーションを実証するため、小樽港外における流況調査について漂流ブイを用いた流況調査を行った。これらの調査の結果、膨大なAISデータから衝突危険船を抽出する手法が開発され、AISデータにもとづく宗谷海峡のタンカー等船舶通過頻度および航行密度が高く衝突確率が高いエリア、原油LNGの出荷状況などが明らかとなった。また航行密度の高い衝突危険域における船舶の接近状況を確認した。ホタテガイへの油濁水の影響については、前年度の実験により油濁水に暴露されたホタテガイの個体のサロマ湖内への垂下養殖を継続し、翌年の生殖器の変化を検査し、油濁の影響を調査した。また前年の急性毒性に関する実験手法を改良し、油濁水暴露時にホタテガイの挙動を測定するセンサーにより、油濁水の急性的な影響を調べた。その結果、影響は50ppm以上の濃度の油濁水を受けた個体に異常な動きが測定された。昨年の評価試験においても50ppmの濃度から死亡個体が現れ、50ppmが影響の現れる閾値と考えられた。しかしながら生殖器への影響については、油濁水に暴露されていない通常のホタテガイ個体と比較して、明確な個体差を明らかにすることはできなかった。これらの結果については、地質研究所成果報告会、沿岸地質グループ成果報告会、国際学会、国内学会等において成果報告を行った。研究2年目の平成22年度は以上の調査を進めたが、平成23年度4月から研究代表者が独立行政法人海上災害防止センターへ転職となり、3年目の調査をやむを得ず中止した。
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WIT Transactions on the Ecology and the Environment (ISSN:1743-3541).
巻: (印刷中)
WIT Transactions on the Ecology and the Environment(ISSN:1743-3541).
北海道の自然
巻: 第49号 ページ: 20-24
北海道立地質研究所報告
巻: 第82号 ページ: 9-12
生物工学会誌 88
ページ: 150-157
110007622002
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