研究課題
基盤研究(B)
平成22年度は、計画通り電子スピン共鳴(ESR)スペクトルからpHおよび酸素分圧を可視化する実験を行った。pH感受性および酸素感受性のニトロキシルラジカル分子二種類を使用し、試験管による模擬試料を用いてpHおよび酸素分圧を可視化した。実験に先立ち取得したpHおよび酸素分圧の校正曲線を用いて、スペクトル空間ESRイメージング法により得られたスペクトル情報をpHおよび酸素感受性に変換した。実験の結果、pHの分解能0.1程度、酸素分圧の分解能5mmHgが得られた。しかしながら、酸素分圧の測定値の精度が十分ではないことが明らかとなったため、データ処理の方法等を再検討した。その結果、実験において次の課題が明らかとなり、データ処理により外乱の影響を取り除く補正を行った。すなわち、(1)マグネット温度のドリフトによる中心磁場の変化、(2)磁場掃引幅の誤差、(3)磁場掃引幅の変化に起因する中心磁場の変化、(4)水溶液試料中のうず電流によるスペクトルの歪み、が最終的に得られるスペクトル情報に対して外乱となることが分かった。pHの可視化については、ニトロキシルラジカルの超微細構造による3つのエネルギー吸収スペクトルの内、低磁場側のスペクトルと中間のスペクトルの間隔を測定することによりpHを測定した。それぞれのスペクトルを単独で測定したデータから二つのエネルギー吸収の間隔を求める方法においては、上記の四つの点は相殺され精度が改善された。これらの結果は、スペクトル空間ESRイメージング法を用いて生体内の機能的情報を可視化する際に有用な知見である。
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http://www.bme.ist.hokudai.ac.jp/BPE/index-j.html