研究課題
基盤研究(B)
ウイロイドは低分子の環状1本鎖RNAであるが、ひとたび宿主植物細胞に侵入すると宿主の転写系に依存して自己複製し、様々な程度の病気を引き起こす。植物をウイロイドの感染から保護する新しい戦略を模索するために、ウイロイド感染で誘導されるウイロイド標的RNAサイレンシングとウイロイドの病原性及び分子進化の関連性を分析した。まず、ジャガイモやせいもウイロイド(PSTVd)感染トマトに蓄積するPSTVd特異的small RNA(srPSTVd)の大規模塩基配列解析の結果、PSTVd高感受性トマトRutgersではプラス鎖由来のsrPSTVdが圧倒的に優占し(90%以上)、PSTVd耐性Moneymakerではほぼ同程度であった。srPSTVdはPSTVd分子のプラス鎖とマイナス鎖の全領域から生成していたが、複数の特定の領域(ホットスポット)から特に多量に生成していた。両品種ともプラス鎖のホットスポット部位は共通し、病原性領域と上部中央保存領域から多数のsrPSTVdが生じていた。一方、マイナス鎖由来のsmall RNAには品種間差があり、Moneymakerのホットスポット部位はより多様であった。すなわち、ウイロイド特異的small RNAの生成パターンには、品種特異性が認められた。また、病原性の異なるPSTVd-Intermediate(強毒型)とPSTVd-dahlia(弱毒性)を比較した結果、茎と葉で生成パターンとホットスポット部位に共通性があったが、部位により生成量に違いが認められた。次に、ウイロイドの病原性発現に関与する宿主遺伝子を特定するため、PSTVd感染トマトのマイクロアレイ発現解析を行った結果、ジベレリン・他、複数の植物ホルモン生合成遺伝子の発現量が変化していた。PSTVd感染で発現量が低下した遺伝子の中でPSTVdと21塩基程度の相同配列を有するものを検索した結果、gibberellin ss-hydroxylaseが見出された。RNAゲルブロットアッセイの結果、本遺伝子は葉より茎でより明瞭に発現量が低下していた。すなわち、本遺伝子はウイロイド感染で誘導されるウイロイド標的RNAサイレンシングの宿主側標的遺伝子となる可能性が示唆された。また複数のmicroRNA発現量にも有意な変動が認められた。RNAサイレンシングに関連する宿主遺伝子(DCL2、RDR6など)或はPSTVdに由来する様々なヘアピンRNAを発現する形質転換トマトとN. benthamiana系統を選抜・育成し、PSTVdのほぼ全長のヘアピンRNAを発現するPSTVd-ΔTLとマイナス鎖由来の主要srPSTVdであるsrPSTVd-257aのヘアピンRNAを発現するN.benthamina系統のT2ホモ接合系統を得た。両系統共にPSTVdの感染・増殖を阻害し、RNAサイレンシングを利用した新規ウイロイド抵抗性戦略の可能性が示唆された。ホップ、ブドウ、カンキツ、スモモから分離したHpSVd変異体をホップに15年間持続感染させ、それぞれの宿主適応過程を分析した結果、HpSVd-grapeは5ヶ所の適応変異を生じ、新たな変異体(HpSVd-hKFKi)に収斂進化した。HpSVd-hKFKiがホップ感染中に獲得した5箇所の適応変異は、原宿主、適応宿主、第3宿主のいずれにおいても、複製能上のメリットは認められなかったが、srHpSVd蓄積量が少なかったことからRNAサイレンシング誘導能が低下していると判断された。特に5箇所の変異を含むsrHpSVdリード数の全srHpSVdリード数に占める比率がHpSVd-KFKiではHpSVd-grapeより低下していたことから、5箇所の適応変異によりHpSVdはRNAサイレンシングを回避した可能性が示唆された。
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