配分額 *注記 |
18,980千円 (直接経費: 14,600千円、間接経費: 4,380千円)
2011年度: 4,940千円 (直接経費: 3,800千円、間接経費: 1,140千円)
2010年度: 4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2009年度: 9,230千円 (直接経費: 7,100千円、間接経費: 2,130千円)
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研究概要 |
遊離胆汁酸はその細胞膜損傷作用により腸内細菌にとって最も過酷な環境ストレス因子になっている.これまでの研究で,研究代表者らはLactobacillus gasseri JCM1131Tにヒトの主要な胆汁酸であるコール酸に対する適応現象を見出している.これは,対数増殖期の細胞を非致死濃度である4mMのコール酸に30分間暴露した後,致死濃度の15mMのコール酸で処理したところ,7時間後でも生残率がほぼ100%であったのに対し,何も処理しない細胞は生残率が千分の一あるいは一万分の一に急速に低下したというものである.この際の適応細胞では,致死濃度のコール酸による細胞膜の損傷が軽減されていて,適応に伴う細胞膜脂質組成の変化が示唆された. そこで適応細胞と非適応細胞から全脂質を抽出し,それらを中性脂質,糖脂質,リン脂質の3区分に分画した.それぞれの画分の比率は適応前後で変化なく,それぞれの画分の脂肪酸組成についても変化がなかった.しかし,糖脂質とリン脂質の組成に有意な変動があった.糖脂質では糖鎖の鎖長が長くなった.またリン脂質ではカルジオリピンの比率が有意に増大した. コール酸適応におけるカルジオリピンの役割について調べるため,ベシクル実験を行った.その結果,カルジオリピンはコール酸による攻撃に対してベシクルに抵抗性を付与することが分かり,カルジオリピンが適応機構に深く関わっていることが示唆された. 本菌のゲノム上には,カルジオリピンの合成に作用すると考えられる2つのカルジオリピン合成酵素遺伝子が存在する.この遺伝子を単独又は両方欠損させた変異株を構築し,それらの株のコール酸適応能を調べた.単独欠損株ではいずれの株でもリン脂質画分におけるカルジオリピンの存在比が低下したが,コール酸適応により野生株並みに増大し,野生株と変わらないコール酸適応を示した.二重変異株ではカルジオリピンが殆ど検出されなかったが,それにも拘わらず,コール酸適応を示した.したがって,カルジオリピンはコール酸適応に必須ではないことが分かった.しかしこの二重変異株では,糖脂質含量の有意な減少とリン脂質含量の有意な増大が見られ,その変化は適応後により顕著になった.このことはカルジオリピンが細胞膜の脂質組成を決定する重要な役割を担っていることを示している.
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