研究課題
基盤研究(B)
アセトアセチルコエンザイムAは、メバロン酸を経由するテルペノイド化合物の前駆物質である。これまで、アセトアセチルコエンザイムAは、チオラーゼスーパーファミリーの代表的な酵素である「チオラーゼ」の触媒作用によってのみ、2分子のアセチルコエンザイムAから新規合成されるとされてきた。このような状況下、本研究課題では、土壌放線菌、ストレプトマイセスCL190株が、「チオラーゼ」に加えて、これまでに報告がなった酵素をも利用してアセトアセチルコエンザイムAを合成することを見つけた。この新規酵素の遺伝子をCL190株からクローニングして大腸菌に導入し、大腸菌内で合成した酵素は、試験管内で、アセチルコエンザイムAとマロニルコエンザイムAを利用して、アセトアセチルコエンザイムAを合成することが分かった。また、この新規酵素は、アセトアセチルコエンザイムAの分解活性は示さないことも分かった。次に、「アセトアセチルコエンザイムA合成酵素」と命名したこの新規酵素の遺伝子(nphT7)を、メバロン酸を合成するための遺伝子(nphT5とnphT6)とともに、別の放線菌に導入すると、nphT7を導入しなかったときと比べて、約250%のメバロン酸の増産が観察された。これは、アセトアセチルコエンザイムA合成酵素遺伝子であるnphT7の導入により、菌体内でのアセトアセチルコエンザイムAの合成量が増大して、結果として、メバロン酸の生産量が増大したと考えられる。この実験結果は、アセトアセチルコエンザイムAを共通の前駆物質とする、3-ヒドロキシ酪酸(生分解性プラスチックの原料)や、有用なテルペノイド化合物である、カロテノイド(色素、抗酸化作用)、タキソール(抗癌作用)、アルテミシニン(抗マラリア剤)、コエンザイムQ10(抗酸化作用)の生物機能を利用した生産の増大につながる可能性があると期待される。
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