配分額 *注記 |
16,510千円 (直接経費: 12,700千円、間接経費: 3,810千円)
2012年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2011年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2010年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2009年度: 5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
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研究概要 |
本研究は,中国甘粛省の敦煌から蘭州に通じる河西回廊とよぶ地域を対象に,ヒマラヤ山脈を越え河西回廊で受容されたチベット密教の造形,表現の基層的な内容を研究する目的である。いままで河西回廊の研究指向は,漢族の視点にたつシルクロードの文化に偏りがあった。本 研究は,河西回廊が西方の他民族と漢族進出で曖昧な国境と文化地帯という視点から現地調査を通じて基層的な密教芸術の内容を明示する。河西回廊の顕著な文化的変容は,まず騎馬民族国家の五胡十六国の樹立で騎馬民族の文化流入がある。その文化的な影響は、敦煌(瓜州)から蘭州の河西回廊が,中原へと寺院の信仰拠点と巡礼路が整備されるなかで,石窟寺院の壁画や塑像の仏像,弥勒仏が交脚弥勒座像(例ー敦煌莫高窟275洞)や菩薩思惟倚座像(例ー柄霊寺169洞)の表現がある。後に吐蕃古道沿い同仁県(レゴン地方)から蘭州にいたるアムド東端のラブラン寺,柄霊寺上寺など信仰拠点の寺院と巡礼路が今日まで中央チベットの基層文化を断続的に引き継いできた。今日の密教文化の現状は、漢民族の社会進出にともなう都市化,道路網の発達にともなう近代化によりチベットの密教芸術の伝統が続々と変容と衰退の現状がある。その典型的な内容は,信仰の拠点寺院の衰退,巡礼路 の変容、ならびに面的にひろがる文化圏でチベットの伝統の衰退がある一方で,漢族の文化の浸透がある。特に芸術では,チベット密教の基層をなす造形(壁画、彫刻,工芸美術)と表現(法舞、行道、モンラムの諸行事、法舞)が変容し,伝統表現を支える人的資源(技能,伝統職人,秘伝)が文化大革命以後に復興の兆しがあるが,伝統技術(製作材料,顔料,品質)が工業製品になり芸術が近代的模倣と化し,文化の継承と修復などの問題が顕在化している。
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