研究概要 |
日常的にトレーニングをしていない健康な男子大学生を用い,常圧低酸素環境(酸素濃度16%)への急性暴露が筋力および運動中の呼吸循環機能にどのような影響を与えるか,常圧低酸素環境および常酸素環境で持久的なトレーニングの呼吸循環機能に与える効果,そして常圧低酸素環境および加圧ベルトでの筋力トレーニングの効果を検討した。低酸素環境への急性暴露によって,筋力は若干減少する傾向を示したが,統計的には有意ではなかった。また,呼吸筋の酸素消費量も低酸素環境による影響が認められなかった。常圧低酸素環境下での持久的トレーニングの結果,最大下作業中の酸素摂取量および呼吸筋の酸素消費量ともに減少傾向を示したが,統計的な有意差は認められなかった。また,常酸素環境下でトレーニングした結果とも有意差は認められなかった。常圧低酸素環境下および加圧下の筋力トレーニングによって,筋力および周囲長は有意に増加した。しかし,両条件間には有意差を認めなかった。以上のことから,酸素濃度が16%程度の低酸素環境では,常酸素環境下での持久的トレーニングと得られる効果に差がないことが示唆された。しかし,加圧トレーニングと同様の効果が常圧低酸素環境下での筋力トレーニングで得られたことは,四肢以外の筋力トレーニングにも常圧低酸素環境下でのトレーニングが有効であることを示している。また,トレーニング後に貧血などの症状を引き起こすことがない点で,低酸素環境下での筋力トレーニングは一般人に有効であることが示唆された。
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