研究概要 |
宮崎県日向灘の大島周辺に棲息するテーブル状のオオスリバチサンゴTurbinaria peltata群体に見られる白斑状の病気を調査し,サンゴの新規な病的症例,ホワイトスポットシンドローム(WSS)として記載した.本州は温帯域を代表するサンゴであり,大島周辺では本種の約1/3の群体に罹患が確認された.円形の白斑の直径は約1cmであった.白斑の場所では褐虫藻数の有意な減少が確認され,通常組織と比較するとその約29%まで減少していることを明らかにした.白化した斑点が多量になり群体全面に広がると,サンゴ群体の壊死および死亡につながった.斑点状に白化し群体表面でスポット状に分布し,一定の大きさに到達するとそれ以上は大きくならないこと,また夏場に活性化し増加することなどから,細菌による感染症が疑われた.そこで病変部から細菌の分離同定を行ったところ,ビブリオを含む多くの細菌が確認された.更に,サンゴの病気の原因としてビブリオの報告が多いことから,宮崎のサンゴからビブリオを単離培養し,沖縄産のオオスリバチサンゴへの感染実験を行った.しかしこの手法では,発症が見られなかったため, WSSの原因菌の特定には至っていない.現在,サンゴ種(ソフトコーラルを含む)を越えて拡大しておりその影響が懸念される.
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