研究概要 |
本研究は,日本語・柳川方言における動詞のいわゆる「非過去」形の現象(例えば、' sleep-Nonpast'の意味であれば、^*</ nu/>でも^*</ neru/>でもなく,/ nuru/と言い,' eat-Nonpast'の意味は、^*</ tabu/>でも^*</ taberu/>でもなく,/ taburu/と言う)は,以下の3つの仮定により説明できることを明らかにした。仮定1 :「非過去辞」/(r) u/を「時制虚辞」と分析し、それゆえ、ひとつの動詞の語幹に対して連続生起を許すとされる。動詞語彙素には複数の語幹があり得ると仮定し、時制虚辞は、複数語幹の場合は短い方を選択する。さらに、時制虚辞は、時制虚辞句も選択し得るとしている。仮定2 :時制つき動詞形は, 2音節かあるいはそれ以上でなければならない。仮定3 :動詞語彙素が与えられたとして、一つの動詞形、つまり、動詞語幹に対して,それぞれの動詞の形態群内で、時制形態の数は同一でなければならない。分析に加えて,本研究は、実証データを提供している。佐賀西部方言の日常でよく使われる266個の動詞の「非過去」形を国際音声記号(IPA)で記述した。266個の非過去形の動詞を含む文の母語話者による発話を録音し, WEB上で聞けるようにした。同方言では「/ e/終末語幹」動詞群に時制の無標形態素の連続が現れていた。
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