研究概要 |
中国語を母語とする日本語学習者にシステマティックに見られる問題-北京語では失われた入声音を含む漢語の音読への母語の干渉-を取り上げ、方言字音使用・識別調査、学習者調査を行うとともに基礎的な教材を作成した。入声を残す方言中、呉語話者は入声音と非入声音(例:呉語「派」/p^ha/と「拍」/p^ha/)が識別でき、広東語話者は入声音相互の区別(例:八/pa:t^¬/と百/pa:k^¬/)もできる。一方、台湾閔南語では3つの入声音/p^¬,t^¬,k^¬/は相互に区別されない傾向にある(例:執/tsip^¬/と職/tsit^¬/)が、声門閉鎖音で終わるとされる字音の閉鎖がごく弱まって母音に近くなり,他の入声音と対立を見せている(例:踏/ta/が達/tat^¬/と)。学習者の習熟度が高まるにつれ入声音の問題は目立たなくなるが、なじみのない語の音は正確に類推できない。教材では日本語字音を中国語各方言の字音と対照させるとともに、音変化の規則性(例:実験と実現)が帰納的に学習できるよう工夫した。
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