研究概要 |
本研究は, Cooper and Haltiwanger(2006)にしたがい,凸性のみならず,非凸性あるいは非可逆性をもつ資本の調整費用関数を想定し,理論的な含意が対応する調整費用関数の形状について推定する.日本の自動車部品産業の事業所レベルのデータ(『工業統計表』)を用いて,最適化の条件であるBellman方程式につき, Simulated Method of Momentsの手法を適用する.とりわけ, General Purpose Technology(GPT ; David, 1990 ; Jovanovic and Rousseau, 2005)である自動車の電子制御化が,資本の調整費用に及ぼした影響について計測する.具体的には,特許の取得データと事業所の製品項目のデータを用いながら,電子制御燃料噴射装置(PET)・電動パワーステアリング(EPS)・ABS・エアバッグ・ナビゲーション・ワイヤーハーネス・リチウムイオン電池の7つの技術を取り上げる.推定の結果,自動車の電子制御化の導入は,日本の自動車部品事業所の設備投資を可逆的にすると同時に,事業所のリストラ・労働者の再訓練・組織改編などによって起こる事業所の規模に比例する固定費用が顕著になったことがわかる.
|