研究概要 |
単結晶Agssアルミナを用いた偏光ラマン散乱実験により,結晶を構成するイオン間相互作用ポテンシャルの決定に成功した。この研究成果をもとにAgssアルミナの結晶格子模型をつくり,分子動力学計算を行うことで多体効果を含むイオン運動の可視化に成功した。これにより,超イオン導電体における可動イオン間多体効果の寄与について,次の結果を得た。(1) Agイオンが互いに反発することで,つぎつぎとイオンが動き出す。(2) Ag-Ag間反発エネルギーが大きいと,互いに押さえつけ合い動けなくなる。逆に反発エネルギーが小さいと,イオンの動きはあたかも液体のように泳動する。(1)と(2)の結論は互いに矛盾しているようであるが,イオン導電体における活性化エネルギーの起源を解明する手がかりとなった。本研究の結論として,イオン拡散の活性化エネルギーには,周囲の原子の配置に依存して決まる『静的』活性化エネルギーと,イオンが移動することで発生する『動的』活性化エネルギー, 2つの要因から成り立つという新規概念を提案した。
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