研究概要 |
実際に現地に生育しているコアマモに作用する波力特性,および波による底質土砂の移動特性を室内水理実験と島根県中海における現地観測により調べ,コアマモの生育が可能な波浪限界の評価法を検討した. a)本模型サイズと同程度の天然コアマモを引き抜くことが可能なcuampは, cuamp> 20m/sと推定できる.水深h=0.6~0.7m程度の浅い海域においては,このような大きな水平水粒子速度を有する波の発生・存在は不可能である.従って,これら沈水植物が来襲波の波力によって引き抜かれる可能性は非常に小さいと考えられる. b)平均粒径d50=0.51mmの珪砂を敷き詰めた砂層ボックス部の底面に生じる砂漣の発生状況を調べた.全面移動限界波高より少し大きな波高になると砂漣の発生が生じることを確認できた. c)模型植生群がない砂面においては,そのシールズ数Ψが限界シールズ数Ψcより小さい場合は,砂漣は生じず海底面の砂移動も生じていない.しかし,模型植生群を設置した場合は,模型植生群の沖側と岸側領域および模型植生群外の全計測線上で砂漣が誘発的に発生する. d)コアマモの群落が見られる島根県中海西岸の大井海岸や南岸の白鳥海岸において表層移動が生ずる移動限界波高Hiの評価を行った.湖面の風速Uが6.5m/s以上になると表層移動が生ずることが推定された. e)これら底面における砂漣や砂移動現象の発生は,コアマモの生育阻害の原因と考えられる. 高潮や津波および河川の洪水流に対する防御策として海岸林や樹林帯の利用が検討されている.波がこれら透過性物体を通過するときに失われる波エネルギ-量を評価すると、海岸林が有する波の透過率と反射率は評価可能である.本研究では、小型実松に作用する流体力特性と射流中における樹幹をモデル化した直円柱に作用する流体力特性を室内実験で調べ、海岸林が有する波の透過率と反射率特性を評価した.葉がある樹木には大きな流体力が作用する結果,海岸林からの波の反射率が顕著となることが分かった.射流中に置かれた直円柱の抗力係数が, Fr数の増加に伴い減少する流れの機構も明らかにした.
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