研究課題
基盤研究(C)
植物の重力屈性は、重力の方向を認識した上で成長方向を制御する反応で、重要な環境応答の一つである。近年、我々を含めた多数の研究グループにより、重力感受細胞についての研究、器官の偏差成長に関わるオーキシン輸送及び応答についての研究は進んでいる。一方でその両者をつなぐ、重力感受細胞内シグナル変換及び伝達、並びに伸長領域の細胞への細胞間シグナル伝達については、その分子メカニズムに関する知見は極めて乏しい。本研究では、シロイヌナズナ花茎の重力屈性の初期過程におけるシグナル伝達において、蛋白質の翻訳後修飾、特にタンパク質リン酸化による制御が介在する可能性を追求している。(A)花茎重力屈性における蛋白質リン酸化制御の役割プロテインホスファターゼの阻害剤(オカダ酸;OA)によりシロイヌナズナ花茎重力屈性が濃度依存的に阻害されることが明らかになった。重力屈性は、重力刺激のシグナル伝達、オーキシン輸送、オーキシン応答性転写調節、細胞伸長など様々なプロセスを含む。OAの作用点をより詳細に調べるには、それぞれの素過程をモニターする必要がある。そこで、重力屈性におけるオーキシン応答性転写調節をマーカー遺伝子を用いて調べた。野生型においては、オーキシン早期誘導性遺伝子IAA5が重力刺激により転写誘導を受けるが、OA処理下ではIAA5の転写誘導は見られなかった。また、花茎伸長能についてもOAにより濃度依存的に阻害されたことから、重力屈性において複数の素過程がOAによる阻害を受ける可能性が示唆された。(B)重力刺激に応答してリン酸化制御を受ける蛋白質の探索シロイヌナズナの花茎断片を試料とし、重力刺激前(1gで立てた状態)と遠心により過重力刺激(10g,5min)を与える実験系を立ち上げた。今年度は花茎から、膜蛋白質を含む総蛋白質の抽出抽出法の検討を行った。
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