研究概要 |
天然α-キチン,再生キチン,アルカリ処理キチンを希酸加水分解処理し重合度(DP)及び重量変化を測定し、キチンのLODPの有無ならびに微結晶サイズや結晶性の変化の検討を行った。 異種の天然α-キチン原料を試料に用いた。これらに分子量の差が生じていたが時間経過に伴い、ほぼ同レベルに達し平衡状態を示した。この時の重量減少率は5%以内にとどまり、希硫酸で分解される非晶領域は極わずかであると推察される。一方、再生キチン,アルカリ処理キチンは天然α-キチンの場合と同様、分子量が低下し平衡状態を示した。しかし、重量減少率は20~40%以上減少した。キチンのLODPは天然キチンの場合450~550、再生キチン,アルカリ処理キチンでは50~70で周期構造が存在すると示唆される。固体構造に関連し広角X線回折測定を行い(020)及び(110)結晶面のピークにおいて検討した。再生キチン,アルカリ処理キチンも天然キチンとほぼ同様のピーク強度を示したが、両者の結晶化度が天然キチンよりやや低く微結晶サイズもやや小さいことがわかった。これは非結晶領域が結晶領域に先行し加水分解されやすく非結晶部が減少したこと、熱処理に伴う結晶化の進行が起き結晶化度の上昇へとっながったと示唆する。 α-キチンより2種類の分子シートを(110)及び(020)結晶面に沿って切り取った。前者は分子間水素結合で形成されており(HB分子シート)、一方後者はN-アセチル-D-グルコサミンリングが積層した構造であるファンデルワールス性の相互作用で形成されている(VW分子シート)。これらの分子シートを水中で分子動力学計算した際、VW分子シートは構造を維持したが、HB分子シートはVW分子シートに再配列した。よって水系の溶解・凝固システムでは、溶液状態の初期構造はVW分子シートであり、この分子シートが積層し構造が形成されると想定される。
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