研究課題
基盤研究(C)
ストレス応答は、個体の恒常性(ホメオスターシス)を保つ重要な生体反応であり、各種刺激によって迅速に誘導される初期応答遺伝子は、生体の"genomic gatekeeper"として細胞の増殖と死のOutcomeを決定している。bZip型転写抑制因子ATF3は、ストレス応答において細胞の増殖(pro-survival)と細胞死(pro-apoptotic)の相反する機能に深く関わっているが、当該年度において以下の点を明らかにした。1.ATF3遺伝子のalternative promoter P1がストレス応答とがん細胞での恒常的発現とで異なった制御を受けること、がん細胞におけるP1 promoterの選択的発現とがんにおけるepigenetic制御を明らかにした(Nucleic Acid Res 2009)。2.皮膚細胞の低線量紫外線応答におけるATF3の新規標的遺伝子p15を同定し、ATF3がDNA修複に関わる一方で、高いdoseの紫外線に対してはATF3が細胞死を誘導することを示し、紫外線量の違いによって、ATF3の細胞運命制御がdualに制御されていることを明らかにした(共同研究Cell Death and Differentiation 2008)。3.遊離脂肪酸によるマクロファージのTLR4活性化経路をATF3がnegativeに制御し慢性炎症を抑制、肥満を軽減する可能性を提示した(共同研究Circulation Research 2008)。4.ヒト大腸がんHCT116細胞のDNA damage応答(がん抑制)と、ATF3高発現ヒト前立腺がんLNCaP細胞(発がん)のゲノムワイドな解析の結果、複数のATF3標的遺伝子を見出した。さらに、DNA damageでは、ATF3経路はp53 pathwayの活性化に関わる一方で、「発がん」状態であるATF3高発現がん細胞では、p53経路が抑制されていることを見出した(PLosOne MS作成中)。ATF3のPro-apoptic作用に関わる標的遺伝子を同定し、ヒト大腸がん細胞を対象にがん治療に関わる研究を進めた(H22年度分子生物学会発表、論文作成中)。5.ATF3の遺伝子改変マウスを用いた個体レベルの解析のため、組織特異的KOが可能であるATF3 floxed mouseを作成し、次いでEII-Creマウスとの交配によりGermline ATF3 KOマウスを作成した。さらに、P53-ATF3 loop制御の解析を目的に、p53ノックアウトマウスとの交配を開始し53/atf3ダブルKO作成に着手した。
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http://www.tmd.ac.jp/mri/bgen/open.html