研究課題
基盤研究(C)
ガングリオシドは神経系に高濃度に存在し、一部のガングリオシドは少量ではあるが神経組織以外の臓器や血球、血清、脳脊髄液に存在することが知られている。ヒトの母乳は新生児、乳児とって、エネルギー源だけでなく、感染防御、脳の発育に重要な働きをしている事が知られている。我々は満期産の母親よりのヒト母乳にはGD3とGM3ガングリオシドが高濃度に存在し、牛乳や調整粉乳より高濃度である事、GD3が初乳では唯一の主要ガングリオシドであり、GM3は出産後8日より急に出現し、徐々に増加する事を報告した。一方、早期産の母親からの母乳に関するdataはないため、妊娠30週未満の早期産時の母乳でも検討した。早期産母体の母乳ガングリオシドは出産後2-3日で頂値となり、10日まで高濃度が維持された。GD3は満期産母乳と同様に出産後、7-10日までの初乳で主要ガングリオシドであり、GM3はほとんど検出されなかった。その後、GD3は低下し、GM3が増加した。出産後5-8日までの母乳GD3濃度は、早期産母乳の方が満期産母乳との間に差はなかったが、それ以降の時期のGM3濃度は早期産母乳が満期産母乳より低値であった。満期産と早期産母乳の母乳は、ともにGD3とGM3を主要成分とし、GD3とGM3がともに未熟な脳及び、大脳神経組織、胎児脳や中枢神経系の悪性腫瘍で主要なガングリオシド成分である事より、14C-GD3、14C-GM3を自分で作製し、ラットの母乳に混入、新生児ラットの胃に直接注入し、大脳への移行、GD3、GM3それぞれよりGM1、GD1a、GD1b、GT1b等、複雑ガングリオシドへの生合成代謝を検討した。しかし、現時点で大脳への移行、生合成は確認されていない。この理由として1.実験手順そのものに問題、2. 14C-GD3、14C-GM3の投与量、濃度が低いため検出感度以下であった。3.ラットへの投与方法、4.ガングリオシドではなく、多糖類に14C-をラベルして検討すべきであった等を考え、実験を継続している。
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