研究課題
基盤研究(C)
メラノサイトは神経堤に由来し、胎生期に背部の神経管から腹側に向かって遊走することが知られているが、その遊走がどのようにしておこなわれているのかはほとんど明らかにされていない。我々は大学倫理委員会の承認のもと、堕胎された胎児の頭部、背部、腹部、足底の4か所から皮膚生検を行い、胎生期のメラノサイトの分化、遊走についてさまざまな解析を施行した。まず、同一個体から得た上記4ヶ所由来の凍結切片を用いてメラノサイトを標識する抗体を用いて免疫染色を行った。初期メラノソームの構成蛋白であるGp100の発現がチロシナーゼ、DCT、MART-1の発現に先行した。また、毛包のメラノサイトは真皮から直接供給されるのではなく、表皮を経由し供給されるということが分かった。また足底では、胎児メラノサイトは汗管開口部にのみ限局して存在しており、悪性黒色腫が皮丘より発症することとの関連性が示唆された。次に胎児メラノサイトを部位別に分離、培養したところHMB-45、αPEP-7h、αPEP-8h、Melan-Aでは染色されなくなり、Nestinでのみ染色されるようになった。しかし成人のケラチノサイト、線維芽細胞との共培養を行うと、HMB-45で陽性に染色されるようになった。培養によって未熟化した胎児メラノサイトがケラチノサイトや線維芽細胞からの何らかの因子により分化成熟したことが示されたが、部位による差異は確認できなかった。さらにマイクロアレイによって4か所の胎児メラノサイトの遺伝子発現解析を行った。その結果、足底由来のメラノサイトとその他の部位のメラノサイトの間で差異を再び認め、そのいくつかの遺伝子(bFGFなど)はウエスタンブロットによる蛋白レベルの解析によっても明らかな差を認めた。
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