研究課題
基盤研究(C)
マウスの母性行動を指標として脳に対する放射線障害を推定する方法を考案した。線量分布の優れた重粒子線(HIMAC:炭素線)を使用することにより、雌マウス脳への照射を大脳皮質部および海馬から視床下部を含めた5ミリ立方の部位に炭素線を照射した。母性行動は、巣を重量として数値化が可能な「営巣行動」と新生仔を巣に持ち帰る行動(時間)をスコア化した「リトリービング行動」を観察して中枢神経に対する照射の影響を検討した。結果は、照射1カ月後のマウス頭頂部脱毛や性周期の発現から下垂体には照射されていないと推測された。照射3カ月後では15Gyおよび30Gy照射マウスで母性行動に変化がみられなかった。45Gy照射マウスでは「営巣行動」はみられるが「リトリービング行動」では達成不可な個体が認められた。照射6月後の15Gy照射では母性行動に大きな影響は認められず、30Gy照射では6匹中1匹のマウスに障害が認められた。さらに45Gy照射では半数が全く母性行動を示さず、新生仔の食殺行動を示す個体も確認され、炭素線の45Gy照射は、高次中枢に対して行動レベルでの不可逆的な障害を与えると推測された。
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