研究概要 |
ステージ1進行胃癌(T2N0)は生存率が90%近くあり、術後補助療法の適応患者とならない。一方で、再発した患者はほぼ全例癌死するため、その再発を予測し再発が予測された患者群に補助療法を行い治療成績向上を目指す介入治療が課題となっている。今回、この介入治療を目的としたバイオマーカー探索研究を企画した。研究当初、原発癌のHOPX遺伝子メチル化の定量化に成功し、進行癌における独立予後因子として同定されていた。その後、さらに症例を増やし予後因子としての検討を加えた結果、検証セットにおいても予後因子としては確定し、予後因子としての重要性を成果として発表できた(Ooki A and Yamashita K et al, Oncogene 2010)。その過程において、HOPXメチル化症例は予後が悪いことが改めて判明したが、Stage I<StageII/III<Stage IVの順にその差が強くなることが判明しStage Iにおける予後因子としての可能性が低いことが明らかになった。そこでStage I症例の予後因子としては別の分子の変化に注目することとした(PRL-3)。この分子はN0の進行癌において特に強く予後因子となるため、ハイリスク症例の同定に極めて有用である可能性を秘めている(Ooki A and Yamashita K, Oncol Rep, 2009)。現在、PRL-3分子のStage Iハイリスク症例の選別の可能性を明らかにすると同時にHOPXメチル化のStage II/III症例における予後因子としての可能性を検討中である。
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