研究課題
基盤研究(C)
ヒトにおける口蓋裂表現型はさまざまであることはよく知られており、ヒトの口蓋裂の発症原因は多因子説で説明されている。しかし、実験動物を用いた口蓋裂モデルの口蓋裂表現型のほとんどすべてが完全口蓋裂のみを呈する結果、どのような種類の因子がヒトの口蓋裂表現型の多型性を生み出しているのか謎のままであり、そのメカニズムの解明が待たれている。当該研究はエピジェネティックな修飾因子が口蓋裂表現型の多型性を生み出していることを完全口蓋裂のみを発症するC57BL/6J系統TGFβ3遺伝子欠損マウスを用いて証明することを目的とした。さらに、当該研究はDNAメチル化酵素阻害剤の1つであるRG108を用いて口蓋裂重症度の改善を標的とする予防的胎児薬物療法の開発に挑戦した。新規に開発したインビトロ解析システムを用いて、C57BL/6J系統TGFβ3遺伝子欠損マウス胎児の口蓋突起内側縁上皮(MEE)細胞は上皮.間葉分化転換と口蓋突起の癒合を引き起こす能力を持っていないが、DNAメチル化酵素阻害剤RG108のインビトロ投与によって部位特異的なMEE細胞の上皮.間葉分化転換と口蓋突起の癒合を引き起こすことを見いだした。そして、TGFβ3遺伝子欠損マウス胎児にRG108を子宮内で暴露させた場合、さまざまな程度の不完全口蓋裂を呈する胎児が得られた。この実験モデルにおいて、Igf2rのセンスプロモーター領域のCG配列はIgf2rのアンチセンスプロモーター領域のCG配列よりも著しく脱メチル化されており、対照群に比べて口蓋組織におけるIGF2Rの発現が著しく増加していた。それらの実験結果を統合し、当該研究は口蓋裂表現型の多型性を生み出す原因がエピジェネティックなメカニズムにあることを新たに洞察して、(世界で)初めて口蓋裂表現型の重症度を改善することを標的とする予防的胎児薬物療法の可能性を示唆した。
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