研究概要 |
<方法>1.AP-1デコイDNAをアテロコラーゲンと混和し,デコイDNAの最終濃度が50μMとなるよう調整した.対照にはAP-1スクランブルドデコイDNAを用いた.2.ペントバルビタールで麻酔後,ラットを頭位固定装置に固定し,複合体を後頭骨下縁と環椎の間から第4脳室内ヘマイクロシリンジを用いて10μl局所投与した.3.AP-1デコイ投与群は投与6時間後にシスプラチンを腹腔内投与した.対照群は6時間後に生理食塩水を30時間後にシスプラチンを腹腔内投与した.悪心反応の判定には悪心反応行動picaで行った.通常飼料とともにカオリンを与え,その摂取量で悪心発現の有無・程度を判定した.4.行動実験終了後灌流固定し,延髄を取り出した.組織片を凍結後,最後野を含む部分を50μm厚で切り出し,抗dyborphin A抗体を一次抗体とした免疫組織化学染色を行った。<結果>AP-1デコイ投与群3匹,対照群3匹で実験を行った.1.対照群において手術操作,腹腔内への注射によるカオリン摂取量の増加は見られず,手技的なものによる悪心発現は見られなかった.AP-1デコイ投与群において2例はシスプラチン投与24時間後のカオリン摂取量が(それぞれ0.3g,0.8g),対照群のシスプラチン投与24時間後の摂取量(2.4g, 3.9g, 1.3g)と比較し少なかった.残り1例は通常飼料の摂取量,体重の減少量が著しく,シスプラチン投与法の正確性が今後の課題となった。2.AP-1デコイ投与群中の上記2匹はシスプラチン投与後72時間の最後野でのdynorphin陽性ニューロンは対照群と比べ著明に少なかった.<考察>以上よりAP-1デコイDNA第IV脳室投与によるシスプラチン悪心抑制への有効性と,AP-1の下流にdynorphin合成が存在し,悪心発現に関与している可能性が示唆された.
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