研究概要 |
近年,インターネットを利用したディジタル音コンテンツの利用が盛んになっており,違法コピーや違法配信などを防ぐ著作権保護技術の確立が急務となっている.そこで,ユーザーには知覚されないように,著作権情報を"透かし情報"として音自体に埋め込む要素技術(電子音響透かし)に注目が集まっている.本研究では,申請者によって既に提案された"蝸牛遅延を利用した電子音響透かし法"に対し,電子音響透かし法として要求される三つの条件(検知不可能性,秘匿性,頑健性)に基づき,提案法の透かし情報の埋め込み限界量を主観・客観評価により調査し,情報ハイディング技術としての応用可能性の範囲を明らかにする.そのため,(1)現提案法の透かし情報の埋め込み限界の調査,(2)透かし情報埋め込みを構成するモデル構成の改良による埋め込み限界の向上,(3)埋め込み情報のブラインド検出法の実現に取り組む.本年度は,課題(2)と(3)に取り組んだ.課題(2)では,提案法のアーキテクチャを2段の基本型からN段の並列型,L段の縦続型,並びにこれらを有機的に組み合わせた複合型(L段縦続N段並列)に拡張することで,埋め込み限界の拡張を狙った.3種類の客観評価ならびに耐性試験の結果,L=2,N=2の複合型で基本型(64bps)の約4倍の埋め込み限界(256bps)を拡張することができた.この場合,短い音声信号にも128bitsの画像情報を隠すようなステガノグラフィを実現できることも確認した.課題(3)では,低域側の瞬時周波数(位相)の変化に着目し,埋め込み時のフレームと同期化することでブラインド検出法の可能性を示すことができた.ブラインド検出の精度なちびに耐性を向上させるためには,頑健な瞬時位相の抽出が求められる.
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