研究課題
挑戦的萌芽研究
有棘赤血球舞踏病の責任遺伝子はVPS13A遺伝子でありその遺伝子産物であるchoreinは酵母VPS13のヒトホモログである。しかし現在までchoreinの生理的な機能についてはほとんど明らかになっておらず有棘赤血球舞踏病の神経細胞死のメカニズムについてはいまだ不明である。本研究ではVPS13A遺伝子産物であるchoreinの細胞内での生理的な機能の解明とVPS13A遺伝子の機能失型変異による細胞死のメカニズムの分子機構の解明を目標として行った。choreinの機能解明の足掛かりとしてchoreinと相互作用する分子の同定を行った。一般的なtwo-hybrid法による検索の場合、膜蛋白質や極端に分子量の大きい分子の同定がシステム上,困難であると考えられる。そこで、単一標品に精製した遺伝子工学的に作成したヒトchoreinペプチドをカラムに固定化し、動物脳抽出液を出発点として、chorein結合タンパク質をアフィニティクロマトグラフィにより精製した。さらに、二次元電気泳動と質量分析を行ったところ、細胞内でchoreinと相互作用する候補分子として調節性小胞輸送に関わるタンパク質を同定した。さらに神経成長因子を加えることにより神経分化誘導させたPC12細胞を用いて、同分子とchoreinの局在を免疫蛍光染色法により解析したところ、神経突起の先端部で共在していることを確認した。本研究により、choreinは小胞輸送系に関与し、神経細胞においては神経伝達物質などの分泌に関わることが示唆される結果を得た。すなわち有棘赤血球舞踏病においては、choreinの機能喪失により神経伝達物質の調節性分泌機構に破綻が及び神経変性に至る可能性が示唆され、小胞輸送系と神経細胞死の関連について今後のさらなる研究につながるものと期待される。
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