研究概要 |
本研究課題では、比表面積が大きく、毒性のないナノダイヤモンド(ND)をキャリアとするドラッグデリバリーシステム(DDS)の構築を目指して検討を行っている。具体的には、有機合成化学的手法を用い、ND表面上を親水性基で密に被覆することにより水溶性を付与し、さらに、標的指向部位、抗ガン剤を担持する。合成したNDを基体とするドラッグキャリアは、がん細胞、担がんマウスを用いて、その薬物動態を評価する。 平成22年度の検討により、先の述べたNDの機能化のうち、有機合成化学的手法により高い水溶性を付与することに成功した(L.Zhao,T.Takimoto,M.Ito,N.Kitagawa,T.Kimura,and N.Komatsu,Angew.Chem.Int.Ed.,50(6),1388-1392(2011))。具体的には、ND表面でグリシドールの開環重合反応を行うことでNDをポリグリセロールで被覆し、高い溶解性を実現した。この溶解性は、水のみならず、生体環境に近いリン酸緩衝溶液中でも得られた。また、ポリグリセロールで被覆されたNDは、^1H-,^<13>C-NMR,IR,Raman等のスペクトルにより構造確認を行い、TGA,TEM,DLCにより分析することで、ポリグリセロールの厚みや核との重量比を求めた。さらに、得られた水溶性NDをサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)にてサイズ分離することにも成功した。以上の成果は、Angew.Chem.Int.Ed.に掲載され、本論文は、本雑誌のback cover pictureにも採択され、我々の成果を広くアピールすることができた。
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