研究概要 |
京都大学の多田らによって2001年に、体細胞とES細胞を細胞融合する手法でも体細胞はリプログラミングされることが、マウスを使って報告されると(Curr.Biol., 2001, 11, 1553-1158)、2005年にはハーバード大学でヒトES細胞を使っての成功が報じられた(Science, 2005, 309, 1369-1373)。しかし、この方法で作成する細胞は4倍体で、正常2倍体とは異なる。山中らはこの報告に触発され、ES細胞中にある遺伝子の注入による体細胞のリプログラミングを実現した。しかし、遺伝子導入のためにレトロウイルスを用いており、遺伝子治療での課題は未解決のままである。 そこで、本研究では、体細胞とES細胞を融合させ、細胞質交換はあるものの核の移動が起こらない数マイクロメートルの孔を介して細胞を対峙させ、細胞融合を行い2倍体の体細胞由来ES様細胞の構築を目指した体細胞とES細胞を所定の位置にポジショニングするためのマイクロ流路を組み込んだマイクロデバイスを設計し、作成した。ES細胞と体細胞の融合には、HVJエンベロープを用いた。細胞融合を行ったところ、20分後にはES細胞から体細胞へグリーン・フルオレセンス・センスプロテイン(GFP)が移動し、両者の細胞核はそのまま移動しいことが蛍光顕微鏡で確認することができ、当初計画したデバイスが作成できた。さらにマルチ流路型デバイスも作成し、同時に32か所で細胞融合の試行が可能となった。ただし、本研究期間内だけでは、この細胞質の移動による体細胞のリプログラミングまでは観察できなかった。
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