研究概要 |
日本白色家兎の関節軟骨を単離培養し,control群,微弱電流群,温熱刺激群,併用群の4群を作製した.微弱電流には直流矩形派(5V,0.1ms,55回/秒)を用いた.培養皿を恒温槽(42℃)に浸して温熱刺激した.Realtime PCRでHSP70 mRNAを,Western blottingでHSP70とユビキチン化タンパク(ubiquitinated protein : Ub)を検討した.ラット膝関節に温熱を発生する電極を用い微弱電流および温熱刺激(関節内温度41℃)を負荷し,in vitroと同様に4群に分けた.関節軟骨を採取し,in vitroと同項目およびrealtime PCRで軟骨基質代謝の指標であるプロテオグリカンコアプロテインを検討した. 微弱電流でHSP70タンパクおよびUbが増加した.温熱刺激でHSP70 mRNAおよびHSP70タンパクが増加した.併用でHSP70 mRNAとUbが増加し,HSP70タンパクが著明に増加した.これはin vivoでも同様であった.また,プロテオグリカンコアプロテインのmRNAは併用群で有意に増加した. 本研究では温熱刺激によって誘導されるHSP70タンパクが微弱電流との併用によりさらに増加し,軟骨基質代謝も亢進させることが明らかになった.微弱電流刺激でUbが増加したことから,微弱電流がユビキチン・プロテアソーム系を抑制しHSP70タンパクの分解を抑制した可能性がある.温熱によるHSP70産生亢進と相まって併用群ではHSP70が著明に増加したと考えた.軟骨細胞においてHSP70は細胞保護効果および軟骨基質代謝亢進効果があることが知られている.温熱刺激と微弱電流刺激の併用は,安全にそして効率的にHSP70を誘導することにより変形性関節症の新たな治療法になる可能性がある.
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