研究概要 |
視覚障がい者の移動支援と,晴眼者の不快感の低減を,できるだけ単純なシステムで両立させるために,超音波を用いた音響案内を考案した。このシステムでは,既存の音声・音響案内と同様に移動目的地点から音を放射するが,可聴域より高い周波数の「聴こえない」超音波を放射し,視覚障がい者の左右の耳付近でその超音波を受信する。受信した超音波の強度と両耳間差を反映させた可聴音を逐次生成し,例えば耳を塞ぐ必要が無い骨導ヘッドホンで提示することで,視覚障がい者に移動目的地点までの方向と距離の手がかりを提供する。22年度は,音響案内の設置が想定される場所,具体的には,役所(2か所),鉄道駅(7駅),横断歩道(2か所),踏切(3か所)を調査対象として,超音波の実態調査を行い,超音波による音響案内の可能性について検討した。その結果以下を明らかにした.(1)超音波は主に突発的な可聴音と同期して発生し,その継続時間は短い。(2)30kHz以上の超音波の音圧レベルは測定限界以下であり,非常に低い音圧レベルで音響案内は機能すると考えられる。(3)安全側の設計として,超音波のピーク値を考慮した場合でも,音響案内の音圧レベルを50dB程度確保すれば,場所や周波数を問わず機能すると考えられる。また,このシステムでは超音波の両耳間差が重要であるため,ダミーヘッドを用いて超音波の両耳間差を詳細に測定した.
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