研究課題
挑戦的萌芽研究
本研究の目的は、水や農水産物に含まれている元素を、元素組成と安定同位体比を指標に用いて流域内と流域外に分類し、地域およびグローバル化を示す新たな環境指標を提案することにある。とくに湧水保全と農業が盛んな西条市を中心に、同様な環境にある遊佐町(山形県)、大槌町(岩手県)を対象にして首相の適用を行った。その結果、西条市と遊佐町においては、水素と酸素の安定同位体を用いて地下水や湧水の発生源を明らかにできた。西条市では、流域に降った雨の蒸発再循環の評価も行うことが出来た。いっぽうストロンチウム、ネオジム、鉛の安定同位体の産地判別の有効性をショウガについて検討し、日本産と中国産を識別できた。この結果を基に、西条市では水のSr同位体マップを作製すると共に、イネのもみ殻のSr同位体分析を行った。その結果、水のSr同位体と対応した変化をえることができ、農産物のSr同位体比の地域の指紋としての有効性を明らかにできた。いっぽう、農産物の鉛同位体比は大気由来の可能性が高く、ネオジム同位体についても同様な結果を得た。すなわちSr同位体は地域の、鉛-ネオジム同位体比はグローバル化の指標として利用できる可能性が明らかとなりつつある。このような結果を、地域の市民が広く実感し認識することを目的として、西条市においては8月は高校生を対象に勉強会を、9月に市民シンポジウムを、11月に高齢者を対象に勉強会を開催した。遊佐町においても、湧水保全に対する本手法の有効性を紹介した。本成果の一部は、書籍などとして発表した。いずれも参加者が多く盛況であった。例えば西条市では、高校生が湧水のモニタリングを、また西条市と連携して市内10地点で水質モニタリングを始めている。これらの活動により、地球化学的情報を市民が実感できる環境指標として表現する方法を開発でき、萌芽性に富む成果をあげることが出来たと考えている。
すべて 2010
すべて 雑誌論文 (3件) 学会発表 (1件) 図書 (5件)
地球環境のトレーサビリテイー. 安定同位体というメガネ(和田英太郎・神松幸弘編)(昭和堂)
ページ: 59-100
鳥海山の水と暮らし 地域からのレポート(秋道智彌(編))(東北出版企画)
ページ: 70-101
人と水 水と環境(秋道智彌・小松和彦・中村康夫編)(勉誠出版)
ページ: 3-34