研究概要 |
我が国には,約100万ヘクタールもの未利用地があり,2020年頃における資源作物の年間収穫可能量は、約1200万トン(乾燥重量),エネルギー資源として原油換算で約540万キロリットルと試算され,効果的なバイオマスエネルギー変換技術の開発が求められている。本研究は水素発酵技術と微生物のグラニュール化現象を組み合わせることにより,バイオマスのエネルギー転換効率を飛躍的に向上させるための技術開発である。 本年度では高温UASB反応槽の水素発酵性能評価と水素生成微生物の特定および保持能を明らかにすることを目的とし,HRTを変化させた連続運転によって,UASBリアクターを用いた合成でんぷん廃水の高温水素発酵における物質変換特性および水素生成グラニュールの微生物群集構造の解析を行った。容積負荷16-32kg-COD_<Cr>/m^3/dの範囲で基質分解率85%以上の良好な処理および安定した水素生成が達成でき,最大水素収率はHRT24hのとき1.2mol H_2/mol glucoseを記録した.この結果は,水素発酵の許容負荷の点では,UASBの方が優れていることを示している.代謝産物の構成はHRTに伴って変化し,HRT24hとHRT 12hでは酢酸と酪酸が優勢であったのに対し,HRT 16hでは乳酸が優勢であった. 水素生成グラニュールの16S rRNA遺伝子を標的としたクローン解析とFISH解析の結果,槽内では各HRT条件において水素生成細菌のThermoanaerobaterium属が優勢であった.このことから,運転期間を通して高温UASBリアクター内にはThermoanaerobaterium属が保持され,これらが水素生成を担っていることが示唆された.
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