研究概要 |
エタノールを原料として,二酸化炭素の副生無しに水素を生成し,同時に炭素を固定する技術の開発を目指して,以下の成果を得た。 1. 化学反応シミュレーションによる水素生成量の見積 触媒無しでのエタノールの熱分解反応のシミュレーションをCHEMKINにより行い,エタノールが反応炉に滞在する間(9秒)に,気相熱分解により生成される水素の量は温度950Kにおいて導入したエタノールの1.5%になることが分かった。 2. 熱分解条件と水素生成量 コバルト(Co)を触媒とするエタノール熱分解を700℃, 750℃, 800℃において行い,生成ガスを四重極質量分析計(QMS)により分析した。QMS分析により検出される水素には、触媒表面での炭素固定で生じた水素以外にも,触媒の関らない気相での熱分解によるものやイオン化過程で生じる水素が加わるが,触媒を使用しない熱分解実験などとの比較により,由来の異なる水素を区別した。700℃では、触媒使用時の水素生成量は,単なる気相熱分解に比べて約20%増加した。前項のシミュレーション結果を用いると,導入したエタノールの1.8%が水素を生成することが分かった。触媒の効果は約850秒持続し,炭素はカーボンナノチューブ(CNT)として固定された。750℃では、CNT成長量が少なく、触媒支援による水素の生成量は700℃ほど大きくなかったが,水素生成量は700℃に比べ多かった。800℃では、CNTの成長が観察されず、基板への固定炭素の量も少なく,水素生成量は750℃の場合とほぼ同じであった。 3. 触媒金属の化学状態と形状 Co触媒微粒子は基板への蒸着後は酸化していたが,エタノール熱分解過程で還元され金属状態となった。熱分解後のCo微粒子は,表面がグラファイト層で被覆されることにより,大気にさらされても酸化しなかった。
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