研究概要 |
本研究は金属の単原子接点のRF信号透過特性を実験的に明らかにすることを目的としている.平成22年度は高周波用リレー接点を利用して金の単原子接点を作成し,数100MHzの周波数域におけるコンダクタンス測定を試みた 1. 金電極を接点とするリレー接点では,接点が開く際に金の単原子接点が形成されることが知られている.単原子接点の寿命は短時間であるが,数100MHzの信号周期と比較すると十分に長い.そこでリレー接点に数100MHzのバイアス変調を加え,,単原子接点が形成されたときにコンダクタンスがどのように変調されるかを観測することを試みた.リレーには高周波用のものを使用し,専用の基板を作製して搭載した.接点が開く際に金の単原子接点に対応する1G_0のコンダクタンスプラトーが観測されること,および1G_0コンダクタンスがバイアス変調されていることは確認できている.今後コンダクタンス変調の振幅や位相のシフトを測定して,数100MHz領域での金単原子接点のRF信号透過特性を明らかにしてゆく 2. 関連研究として,単分子接合の高周波伝導に関する実験も行った.単分子接合の高周波伝導は既存のデータが無く,金属単原子接点の高周波伝導よりもさらに未踏の領域である.平成22年度は,金電極にBDT分子を架橋したAu/BDT/Au接合の交流コンダクタンス測定を行った.室温で動作するMCBJ装置を使用して単分子接合を形成し,LCRメータを用いて200kHzまでの交流コンダクタンス測定を行った.位相角は負で周波数が高くなるに従って絶対値が増加することから,Au/BDT/Au接合は容量的になっていることがわかる.しかし位相角の周波数特性は接合によるばらつきが大きく,信頼性のある周波数特性を得るには至っていない
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