研究概要 |
巨大技術システムにおける安全確保のためには従来から工学的手法によるリスクの同定,発生頻度や影響規模の評価などが行われており,こうしたリスク評価の結果に基づいて安全性向上のための対策が施され,さらにその対策の効果についても工学的な評価が行われつつある。技術システムにおける安全確保のための一連の活動の重要な課題のひとつは,安全目標の設定,すなわち,「どこまで安全性を追求すれば十分なのか(How safe is safe enough?)」という問題である。 本研究では,巨大技術システムが受容される安全水準を決定する要因を総合的・定量的に検討する方法論・手法を提案するとともに,企業の安全達成能力としての「保安力」を図る指標(performance indicator)についての提案を行い,横浜地域の企業へのアンケートや保安担当者へのインタビューにより,その指標の妥当性と合理性について考察することを目標とした。 本研究では,特に,重大産業災害について,社会受容と経済活動がバランスする合理的な安全水準の検討に役立てるため,以下の点について検討を行い,重大産業災害と社会受容性に関する仮説モデルを作成し,社会の設定すべき安全目標についての知見を得た。 (1)災害発生に伴いどの程度の社会コスト(人・経済・自然環境)が発生しているか。 (2)この現状を一般市民は受容しているかどうか。 (3)受容していない場合,社会はどの程度の経済コスト増を負担することが妥当か。 (4)不必要な復旧対策コストを発生させないための事業者にとっての安全対策上の要点は何が。
|