本研究は、近世に日本人とアフリカ人(黒坊)との間で行われた音楽文化交流の状況を歴史上の主だった出来事を跡付けることによって明らかにしようとするものである。平成22年度は前半には下記のように長崎での資料調査を行ったが、後半には病気のため、当初予定していたオランダでの海外資料収集を達成することができなかった。 日本人とアフリカ人(黒坊)との交流の状況は文書史料にではなく、絵図資料に豊富に見出されるとの日本史専門家のアドバイスに従って、長崎歴史文化博物館にて絵図資料の調査・収集を行った。永見徳太郎編『続長崎版画集』には16点の黒坊を描いた貴重な版画、また『出島図-その景観と変遷-』(長崎市出島史跡整備審議会編)には「音楽と黒坊」を主題とした少なくとも9点の絵図が発見された。また原図の後世における模写と思われるものも豊富に見つかり、精密な図像学的検討を要することが明らかとなった。このような調査は今後も国内で継続する必要があるが、他方海外、特にオランダに飛散した資料の調査も是非必要で、今年度それを実行できなかったことが悔やまれる。
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