研究課題/領域番号 |
21652037
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
言語学
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
藤田 耕司 京都大学, 大学院・人間・環境学研究科, 教授 (00173427)
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研究期間 (年度) |
2009
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研究課題ステータス |
完了 (2009年度)
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配分額 *注記 |
1,600千円 (直接経費: 1,600千円)
2009年度: 1,600千円 (直接経費: 1,600千円)
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キーワード | 言語の起源・進化 / 回帰的統語計算 / サブ・マージ / 行動文法 / 生成生物主語学 |
研究概要 |
生成生物言語学における言語の起源・進化研究の第一の主要課題は、ヒト言語固有とされる回帰的統語計算能力、より具体的には「マージ」操作とその回帰的適用の起源と進化の解明である。本研究の目的は、マージの前駆体として、階層的・系列的な物体操作能力、P.Greenfield(1991)などがいう「行動文法」を想定する本研究代表者の立場から、この能力が言語の抽象的記号操作能力へ拡張するするプロセスを、理論言語学のみならず脳科学や神経行動学の知見に基づいて明らかにし、よってこの行動文法起源説にさらなる裏付けを与えることにあった。 先行研究においては、文脈自由型句構造文法の能力がヒト固有であるのに対し、有限状態文法は一部のトリやサルにも観察されることが知られていたが、Friederici & Brauer(2009)は前者を制御する神経回路が系統発生的にも後者のそれより新しいものであることを報告している。また、「ミラー・システム」が言語と行動の双方に関わるものであることも現在ではよく知られている。これらの知見を行動文法に結びつけ、行動文法の第一段階(ペア方式)を非回帰的操作、第二段階(ポット方式)を準回帰的操作、第三段階(サブアセンブリ方式)を真回帰的操作と特徴付け、それぞれに対応するマージ操作のサブクラス(ペア・マージ、ポット・マージ、サブ・マージ)を設定した上で、それぞれの外適応的進化に関わる仮説を掲示した。 ヒト言語進化において回帰的統語計算が可能になったのはサブ・マージの出現以降であり、プロト言語においてはペア・マージの繰り返し適用による非階層的・線条的記号列のみが可能であったと推定した。また、ペア方式型行動文法およびそれに由来するペア・マージは、遅くとも200万年前、ホモ・ハビリスの時代にはすでに存在していた可能性を、その脳進化や石器文化の開花に基づいて推定し、従来、ホモ・エレクトスと結びつけられていたプロト言語について、その統語部門独自の起源をさらに遡って探る必要性と可能性を指摘した。
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