日本語研究の最新の成果である「役割語」の視点を導入して、「写生」・写生文を見直した。俳句実作者と俳句評論家を中心に、近代文学研究のテーマとして議論される「写生」について、日本語研究も加わって論じる場を立ち上げた。まず、「写生」とは固定観念から主体を解放することを前提とするから、その実践である写生文は「役割語」とはなじまないことが確認できた。しかし、写生文の中の方言は「役割語」ではないとか、写生文の方言だけは資料として第一級だとはいえない。写生文においても、使用された方言の資料価値は、作品個々の問題であるという結論に至った。
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