研究課題
挑戦的萌芽研究
社会行動発達においては、思春期特有のホルモン環境が重要な役割を果たしている。近年、思春期特有の神経内分泌機構についての研究には大きな進展が見られているものの、思春期に特有の行動変容との関係については、未だに十分な解析が行われていない。本研究は、思春期の行動特性を明らかにし、思春期の発動に至る内分泌環境や環境要因が思春期特有の行動に及ぼす影響、さらに思春期の行動異常が後の行動表出に及ぼす効果を明らかにする新しい行動研究領域を立ち上げることを目指して行われた。本年度は、幼少期の成育環境が思春期の社会的不安・情動性や攻撃行動の発動に及ぼす影響とその神経内分泌基盤について解析した。生後2週間の間に毎日3時間ずつ母子分離されたC57BL/6Jの雄マウスが5週齢に達した時点から9週齢に至るまで、攻撃行動(レジデント・イントルーダー法)や、社会的探索行動(本プロジェクト1年目に確立した測定装置及びテストパラダイムを使用)を測定した。その結果、母子分離群のマウスでは、思春期(35-42日齢)発動に伴う攻撃行動の発現が見られず、その後も9週齢に至まで、統制群マウスと比べて攻撃行動発現が大きく低下していることがわかった。一方、社会的探索行動には違いが見られなかった。攻撃行動の低下と並行して、血中テストステロンレベルや脳内アンドロゲン受容体レベルも有意に減少していることが見出された。また、視床下部室傍核では、新生児期母子分離マウスの方が、統制群マウスに比べて、オキシトシン陽性細胞数は増加しているが、バソプレシン陽性細胞数には減少が見られることも明らかとなった。この様に、本研究課題では、思春期の行動特性を定量化する社会行動測定パラダイムが確立したこと、更に行動測定結果をもとに、その神経内分泌基盤の解析を進めることにより、思春期に特有の行動変容の理解に繋がる新しい知見が見出されたことは注目に値する。
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