研究概要 |
中枢神経系の再生能を持つが,これまで心理学ではあまり利用されてこなかった動物を用いて,切除後再生した中枢神経系と記憶保持との関連について,学習心理学の立場から比較検討することが本研究の目的である。具体的な被験体の種は,中枢神経系の再生能を有する幼若期の被験体を安定的に得ることができると昨年度の研究でわかったグッピーのオスとゼブラフィッシュのオス,ならびに飼育や繁殖の容易なプラナリアを用いた。 グッピーとゼブラフィッシュに関しては,条件刺激として色や光を用いた条件づけの確立を目指した。その結果,餌を強化子とした場所学習より,電撃を強化子としてシャトルボックス装置を用いた回避条件づけ法の方が比較的有効であることがわかった。しかし,学習成績はあまりよくなく,ラットやマウスを用いた学習実験に比べると,記憶保持の指標として曖昧さの残るものであった。この学習成績の低さは,他の先行研究とも一致するものであるが,より明確な指標が得られないか,学習心理学的研究としては今後さらなる検討が必要である。一方,プラナリアに関しては,強化子として餌を用いても電撃を用いても,被験体が装置内で動かなくなってしまい,有効な学習実験法を研究期間内に確立することは出来なかった。 中枢神経系の再生に関しては,実体顕微鏡と眼科用手術器具を用いれば,サカナの大脳の一部を破壊することは可能であるが,位置を特定したより正確な切除はできなかった。この点に関しても,さらに道具や手技を向上させ,今後検討を継続していく必要がある。
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