研究概要 |
北大西洋から得られた鉄マンガンクラスト試料D96-m4の成長パターンを確認し,後にヨウ素同位体測定結果と古地磁気層序の結果を対比できるように高知大学コアセンター保有のマイクロフォーカスX線CT装置にておよそ2cm角の試料を準備し,成長縞の3次元断面画像を撮像し,解析を行った.その結果,成長縞の3次元的な広がりをある程度とらえることができた.SQUID顕微鏡によるD96-m4試料の極微細古地磁気層序の適用についてはデータ解析手法の改良を重ねて,欧文誌Geologyに成果を出版する事ができた(Odaetal,,2011).これにより,D96-m4試料の成長速度は百万年あたり5.1mmと推定された.また,SQUID顕微鏡による極微細古地磁気層序の手法を改良するために,D96-m4試料から作成された別の薄片について,低温消磁と交流消磁を組み合わせた実験について,SQUID顕微鏡を保有する米国マサチューセッツ工科大学において行ったが,液体窒素による低温消磁を行うと急激な温度変化によって薄片試料がスライドガラスからはがれるのが問題であることが判明した.さらに,古地磁気層序の信頼性を高めるために,特に低温磁性を中心に岩石磁気分析を進めたが,常温で磁性を持つのは単磁区一多磁区粒子のチタン磁鉄鉱,低温で磁性を持つのはキュリー温度(ネール温度)が55Kのイルメナイトおよび5-15Kの未知の磁性相(ある種の陽イオンを含むvernadite)であると考えられる.ヨウ素129の分析は安定同位体との比率が10^<-14>程度が要求されるため,核爆発起源および運用中の原子炉から排出されるヨウ素129のバックグランド測定および鉄マンガンクラスト試料の測定準備を進めていたが.東日本大震災およびそれにともなう原子炉事故によって分析が困難な状況となった。
|