研究概要 |
絶対圧力スケールは、地球深部条件における標準物質の横波・縦波速度(弾性波速度)及び体積を同時に測定することで全く独立に構築することが可能である。申請者は、これまで下部マントルの鉱物学的モデル構築のため地球深部物質の弾性波速度測定に関する研究を行い、「レーザー加熱ダイヤモンドセル」「ブリュアン散乱装置」「放射光X線回折」の3つのシステムを組み合わせた、高温高圧弾性波速度測定システムを大型放射光施設SPring-8へ導入し(右図参照)、地球内核圧力条件における横波速度の測定に成功している(弾性波測定の世界最高圧力記録)(Murakami et al.,2007a,b,2008)。一方で現システムでは絶対圧力スケール構築に必要な縦波速度の測定が技術的な問題から不可能であることが判明した。この問題を解決するために、申請者はブリュアン散乱測定における前方・後方散乱同時測定法という全く新しい手法を着想し、縦波・横波(Vp・Vs)の同時測定を実現し、地球深部条件に適用可能な絶対圧力スケールの構築を提案するに至った。ブリュアン前方・後方散乱同時測定法という新しい着想に基づき、高温高圧力条件下その場横波・縦波速度(弾性波速度)同時測定システムを導入し、他の測定結果に全く依らない地球最深部条件で適用可能な絶対圧力スケールを構築し、また新たに構築した絶対圧力スケールを厳密に適用することによって、地球深部物質の相転移モデルの再検討を行うことを目的とし、NaClにおいて圧力130万気圧までにおいて正確な絶対圧力スケールを構築する事に成功した。
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