研究課題
挑戦的萌芽研究
本研究は細胞の追跡を可能とする「トラック細胞」の創製を目的とした。これは、生きたままの個体で検出可能な細胞の創製を目的とし、具体的には、核磁気共鳴法(MRI : magnetic resonance imaging)、蛍光法(FI : Fluorescence imaging、特に深部までのイメージングが可能な近赤外線蛍光検出法)により検出される細胞を創製する。これによって、生きた動物の移植細胞などを追跡することができ、細胞の行く末を観察することができる。そこで本研究では、生きたままの細胞に機能性タンパク質、化学物質を同時かつ迅速に導入できる系を確立することで新規機能性細胞の創製を行った。これは細胞表面に機能性タンパク質およびタグと呼ばれるタンパク質を発現し、一方で、機能化学物質にリガンド部位を有機合成し、タグとリガンドの特異的結合を利用して双方を結合する。ここで二種のタグ(ビオチン・アビジン系とハロタグ系)を利用することで、生きたままの細胞の表面に4種の機能物質(YFP蛍光色素、CFP蛍光色素、赤外線蛍光色素、ガドリニウム磁性錯体)を同時に導入できる新規機能性細胞の創製に成功した。さらに、この新規機能性細胞を用いて、細胞追跡への応用を検討した。核磁気共鳴法(MRI : magnetic resonance imaging)、近赤外線(NIR : near-infrared)分光法により、体内かつ生きたままの個体を検出できる機能性細胞を導入し、マウスin vivoでのイメージングを行ったところ、MRIでの撮像とNIRでの撮像の両方が観察出来た。このような細胞は、再生医療での移植細胞の動態だけでなく、ガン細胞の転移、腫瘍や病原体に対する免疫細胞の応答の解明に繋がると期待できる。
すべて 2009
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
Chemical Communications 27
ページ: 4040-4042