研究概要 |
生理活性物質や機能性材料などには、ヘテロ環化合物が数多く知られており、ヘテロ環化合物を最小限の環境負荷で合成する新手法の開発は重要な課題となっている。含窒素小員環化合物に不飽和化合物を挿入する反応は含窒素環状化合物を合成する上で原子効率のよい有用な手法である。本研究ではニッケル触媒を用い、アゼチジノンの炭素-炭素結合にアルキンを挿入する反応について検討を行った。その結果、Ni(cod)_2およびトリフェニルボスフィン存在下でアゼチジノンとジフェニルアセチレンのトルエン溶液を加熱撹拌すると、ピペリジノンが生成することがわかった。本反応ではまずアゼチジノン、ジフェニルアセチレン、及びニッケル(0)が酸化的環化することによりニッケラサイクル中間体が生成し、次にβ炭素脱離によって炭素-炭素結合が切断され7員環ニッケラサイクルへと変換されたものと考えられる。 連続する3つの窒素原子を含むベンゾトリアジノンがニッケル触媒により活性化され、反応性アザメタラサイクルが生成することを最近見出している。この反応で副生する化合物は、環境に影響を及ぼすことのない窒素分子のみである。本研究では、上記の反応を発展させて、アレンをエナンチオ選択的に挿入させる反応を開発した。その結果、ベンゾトリアジノンとノナ-1,2-ジエンに触媒としてNi(0)/PMe_3を作用させると挿入生成物が好収率で得られた。次に不斉反応への展開を試み、(S,S)-i-Pr-FOXAPを用いて90%の鏡像体過剰率で生成物を得た。また、カルボニル基の代わりにスルホニル基を有する基質でも同様な脱窒素アレン挿入反応が進行し、4-メチレン-3,4-ジヒドロベンゾチアジン-1,1-ジオキシド誘導体が良好な収率で得られること、および(R)-Quinapを不斉配位子として用いると96%の鏡像体過剰率で生成物が得られることを明らかにした。
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