研究課題
挑戦的萌芽研究
前年度に引き続き、水素結合により形成されるマイクロメーターサイズの巨大ベシクルを利用し、水系で機能する超分子マイクロリアクターの設計・開発に向けた検討をおこない、以下の成果を得た。1.グアノシン系マイクロカプセル先導例として我々が見出したグアノシン系化合物を利用したマイクロカプセルについて、さらに検討を加えた。まず、ベシクル作成条件を種々検討した結果、非イオン界面活性剤の共存下で単層膜ベシクルの作成に成功した。単層膜ベシクルは中性条件下で大きな負のゼータ電位を示すため、分散安定性が高く、遠心分離器によるベシクルの沈降操作の後も、ほぼ定量的に再分散された。また、酸性pH領域ではゼータ電位の減少によるベシクルの凝集が起きること、さらに非イオン界面活性剤の添加により、ゼータ電位が減少して凝集ではなくベシクル融合が起きることが判明した。これにより、pHによるベシクルの凝集・分散制御、非イオン界面活性剤をトリガーとするベシクル融合を引き起こすことが可能となり、マイクロカブセルおよびマイクロリアクターとしての有用性を示すことができた。2.スルファミド系マイクロカブセル昨年度見出したスルファミド系化合物による水素結合性マイクロカプセルについて、その作成条件や機能性などについてより詳細に検討した,具体的には、二次元水素結合ネットワークを水中で保護する被覆部位の構造や物性を合成化学的に変化させ、ベシクル形成能との関連を系統的に検討し、非対称誘導化がベシクル形成の分子設計として有効であることを明らかにした。また、透過型電子顕微鏡観察などから、ベシクルは二次元シートを貼り合わせた特異な構造であること、さらにベシクルが種々の条件下で安定に存在することなど、スルファミド系がグアノシン系ベシクルより堅い二次元膜を形成し、強固な膜で囲まれたマイクロリアクターとなることを確認した。以上の成果から、「膜融合制御に基づく機能性超分子マイクロリアクター」の実現に向けた材料設計指針を示すことができた。
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