研究概要 |
マイクロ波加熱によって有機合成反応は速く進行することは知られているが、その加速機構については未だ解明されていない。機構解明のためには、熱的効果と非熱的効果を分離する必要があるが、装置上の問題から正確に分離することが難しかった。ガラス容器を用いた場合、マイクロ波は内部の試料溶液まで到達する。これに対して、SiC(炭化ケイ素)容器を用いた場合は,マイクロ波は容器壁で全て吸収されるため,内部の試料には到達しない。すなわち、SiC容器を用いてマイクロ波照射を行えば、内部の試料溶液は容器からの熱伝導でのみ温度が上昇するので、オイルバスを用いて加熱するのと同じことになる。このため今回、ガラス容器とSiC容器中の試料溶液をシングルモードマイクロ波照射装置を用いて合成反応を行い、両者の反応性を比較することにより、マイクロ波の非熱的効果を抽出することを試みた。 シングルモードマイクロ波合成装置(2.45GHz,密閉加圧)を用いた。オクタン酸と1-オクタノール、触媒としてモンモリロナイトKSF、または硫酸を加えてそれぞれのエステル化を試みた。マイクロ波を照射して2分程度で所定の温度(140~170℃)とした後10分間照射を行った。反応温度は、試料溶液中にセットしたルビー温度計により測定した。その後、NMR測定により、生成物3の収率を求めた。その結果、モンモリロナイトKSF、硫酸のいずれについても、SiC容器を用いた場合はガラス容器を用いた場合よりも収率は低く、マイクロ波による反応促進効果が認められた。
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