研究概要 |
金属シャペロン機能を示すことが期待される枯草菌のCotDの発現系を前年度構築したが,CotDは多数のシステイン残基を含むため空気酸化されやすく,単離出来なかった。今年度,大腸菌を宿主とする組換え体を培養・発現誘導した後,尿素と非イオン性界面活性剤TritonX-100で処理した後,沈殿をイオン性界面活性剤SDSと還元剤2-メルカプトエタノールで可溶化することによって精製することに成功した。CotDの銅(II)結合性を吸収および電子スピン共鳴スペクトルで調べたところ,銅(II)イオンはまず主鎖に結合した後,少なくとも2つのヒスチジン残基のイミダゾール基に結合することがわかった。1分子のCotAあたり5個以上の銅(II)イオンを結合できることから,CotDは期待通り極めて高い金属イオン結合能を有していることがわかった。しかしながら,CotDの単離条件の検討に時間を費やしたので,CotDのシャペロン機能の検討は,十分行えなかった。発表した論文はCueOの発現系にCotDを共発現させたものであるが,CotDの共発現効果は有為レベルではなかった。一般に金属タンパク質は組換え体が得られてもホロ化がネックとなり,タンパク質の有効利用に至らないことから,CotDの機能を検証する実験は次年度も継続する予定である。CotD機能の当面のターゲットとしているCotAの枯草菌での発現系の改良については,様々の分泌シグナルの利用に挑戦したが芳しい結果は得られなかった。また,高発現の妨げになる可能性のあるループに存在するプロリン残基に変異導入したが,CotAの発現量や機能には大きな変化はなかった。今後は,CotDのCu(II)シャペロン機能を分子レベルでより詳細に調べるとともに,銅以外の金属イオンのシャペロン機能についても検討する予定である。
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