研究課題
挑戦的萌芽研究
生命現象は、生体分子間の弱い相互作用によって支えられていることが多い。例えば、膜を構成する脂質は一義的な化学構造を有する小分子化合物であるが、その集合体である脂質二重膜は特徴的な生物機能を有している。本年度の本研究は昨年度に引き続き、弱い相互作用を官能基ペアーと機能配座に基づく記述法を検討した。実験的には、脂質分子のNMRを測定することによって配座の解析を進めた。本年度の研究では、脂質問の相互作用にかかわる官能基ペアーと機能配座を解明するために、スフィンゴミエリン(SM)の分子間相互作用を、固体NMR測定によって精査した。その結果、脂質ラフトが形成される条件において、SM分子の自由度は顕著に減少していることを初めて明らかにした。さらに、分子間相互作用に必要な水素結合形成に有利な配座を取ること、また、官能基ペアーとしては、水素結合供与体と受容体の両方として働くアミド基が最も重要であることを明らかにした。さらに、これらの結果を計算化学的に検証することに成功した。次に、これらの相互作用を詳細に解析するために水溶性を向上させたコレステロール誘導体の合成を試みた。その結果、3位ヒドロキシ基にポリエチレングリコールを導入した誘導体が、脂質ラフトを比較的良好に再現することを見出した。この誘導体によりて、脂質二重膜のモデル系を用いた高分解NMR測定が可能となった。すなわち、通常のリボソーム膜では不可能であった水素核NMRスペクトルが、コレステロール誘導体を含む膜系で可能になるので、膜結合状態における脂質分子の活性配座解明が飛躍的に進亀むことが期待される。
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http://www.chem.sci.osaka-u.ac.jp/lab/murata/research/index.htm