研究概要 |
本研究の目的は,近傍の酸素濃度を制御可能なマイクロ酵素センサを開発するとともに,そのセンサをプローブとして搭載した電気化学顕微鏡(SECM)による単一筋管細胞(C2C12)の拍動時におけるグルコース消費量計測にある.酸素選択的透過膜であるポリジメチルシロキサン(PDMS)を被覆したマイクロ電極にグルコース酸化酵素(GO_x)を修飾し,酸素濃度計測型のマイクログルコースセンサーを作製した.このセンサーのグルコース応答領域は,10μMから数mMレベルであり,細胞培養液中のグルコース(5-25mM)の計測が困難であった.そこで,マイクロ電極を金電極近傍に設置し,金電極によってGO_xの基質である酸素を水の電解反応を利用して供給した.すると,数十mMレベルの高濃度領域を計測できた.さらに,ポリイオンコンプレックス法を用いて酵素を電極表面に導入したところ,100mMの高濃度グルコースを計測できる可能性を示した.これまで,この濃度領域を希釈操作なしで計測した例はなく,極めて重要な手法の開発に至った.また,電極表面にGO_xとグルコース脱水素酵素(GDH)を同時に固定化した電極では,基質であるグルコースが酵素間レドックスサイクリングを起こし,サブμMレベルの高感度計測が可能であることを示した.これにより,1つの電極で6桁の濃度領域を計測可能なセンサーを開発した.単一筋管細胞にマイクロ電極を近接させ,細胞の拍動時時おける酸素消費を計測した.細胞に電圧パルスを印加した際の酸素還元電流を計測したところ,パルス印加に同期してノンファラディックなスパイク状の応答を与えた.パルス印加停止後の酸素還元電流は,印加前と比較して減少しており,細胞が拍動現象により酸素を消費することが明らかになった.また,細胞培養基板上に細胞の吸着を抑制する効果のあるポリエチレングリコールパターンを作製し,細胞のラインパターンを得ることができた.この細胞ラインを対象に,1個の筋管細胞の代謝活性評価を行った.
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