研究概要 |
本研究は,近年,注目されている"イオン液体"(IL)を用いた新たな高分子微粒子の高機能化,精密設計法の確立を目指すものであり,ILを機能性物質として高分子微粒子と複合化した自立型感温性高分子微粒子の合成に挑戦する。初年度の知見を踏まえ,本年度はIL中で低温溶解-高温析出の下限臨界溶液温度(LCST)型相挙動を示すポリベンジルメタクリレート(PBzMA)をシェルとする,ILを含有したカプセル粒子の合成を試み,膨潤媒体中でなくとも中空部がILのリザーバとなることでシェルが低温膨潤-高温収縮し,粒子単体で可逆な体積変化を示す自立型感温性カプセル粒子の創製を試みた。 PBzMAのIL中でのLCSTは220℃と比較的高温であるが,ILと親和性の低いスチレンを共重合することにより,水媒体不均一系での観察が可能な100℃以下にLCSTを低下させた共重合系にて,重合処方の検討を行い,カプセル粒子の作製を行った。シェル層は不完全ではあるもののILを含有した粒子が得られた。 それら粒子は膨潤溶媒であるILに再分散させること無く,水媒体中で温度に応答した体積変化を示し,繰り返し温度を変化させたところ可逆に粒子径を変化することが観察された。しかしながら,ILの漏れだしや強度不足が懸念されたため,さらなる重合系の検討を行った。ポリマーの種類や重合粒子中の粘度制御など詳細に検討を進めたところ,PBzMA誘導体であるポリフェニルエチルメタクリレートを用いた系において,より欠陥の少ないシェルを有するILを含有した粒子が得られ,さらに,水媒体中でより速く温度に応答して可逆に体積変化を示すことが観察された。
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