研究概要 |
理論的に予測されているグラフェンのジグザグエッジに特徴的な現象(超伝導,強磁性等の発現)を実験的に検証するには,原子レベルで揃ったエッジを両端に持つグラフェンナノリボンの作製が不可欠であるが,現在のレジストプロセスだけでは作製できない.本研究では,世界に先駆け,原子レベルで均一なエッジを持つグラフェンナノリボンを革新的な方法で実現すべく,絶縁性単結晶ナノワイヤをシャドウマスクとした酸素プラズマエッチングによる新しい細線加工プロセスを確立し,カイラリティが厳密に制御されたグラフェンナノリボンを創製することで,それによって初めて実現される"ナノリボンに特有の新奇伝導現象"の発現をめざしている。昨年度に製作した平行平板型のプラズマエッチング装置を用い,フォトレジストをマスクとした酸素プラズマエッチングから開始した。これにより5ミクロン程度の幅をもつグラフェンリボンの作製が3秒程度のエッチング時間で再現性良く得られることがわかった。特に絶縁性単結晶ナノワイヤをシャドウマスクとする際には大きなグラフェンシートを用いた方が有利となると考え,これまでのキッシュグラファイトからスコッチテープを用いて作製する方法から,化学気相成長(CVD)によって作製されたセンチメートルサイズの単層グラフェンシートを用いる方法へと変更した。そのため,銅板上にCVD成長したグラフェンシートをシリコン基板上に移すプロセスの確立を行った。現在,絶縁性の単結晶ZnOナノワイヤをシャドウマスクとした酸素プラズマエッチングを行っており,ナノリボンの形状がようやく得られつつある。今後,引き続き原子オーダーで均一なエッジと線幅を持つナノリボンをめざした加工技術の確立と特性評価を進めていく。
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